佐野史郎の怪演ぶりが見ものの問題作 『LSD ラッキースカイダイアモンド』 (1990年)
今回取り上げる『LSD ラッキースカイダイアモンド』はちょいとワケありなオリジナルビデオ作品です。
・キャスト
ヨーコ:網浜直子
桜子:中村れい子
片山院長:佐野史郎
・あらすじ
若き天才医師である恋人の片山が院長を務めるクリニックで、毎日、不気味な悪夢にうなされつづける少女ヨーコは、姉の桜子の看病と片山の治療も空しく症状がいっこうに回復しない。姉の桜子はヨーコの容体に疑問をもち、片山に詰め寄ると、深刻な精神障害を患っており、これを治すには脳を手術するしかない、と言われてしまう。ヨーコは姉や片山の強引な説得に、半信半疑ながらも手術に同意するが、片山と姉は手術によって開頭され晒されたヨーコの脳を弄りながら、性行為に興じるのだった。手術後にもさらに狂気じみた言動でヨーコを圧迫するふたりに恐怖し、逃亡しようとするヨーコに、狂気を露わにした片山と姉が襲いかかる……
(wikipediaから一部あらすじ引用)
ウィキペディアのあらすじではいろいろ詳細に書かれていますが、もっと簡潔にあらすじを説明すると、マッドな院長とその助手の姉が変態過ぎるからどうにかして逃げようというストーリーです。本作で特筆すべき点はやはり佐野史郎の狂いっぷりでしょう。『ずっとあなたが好きだった』の冬彦さんとはまた違った彼の演技がここで見れますよ!
ダンボールロボと化した佐野史郎が執拗に主人公を追いかけ、彼女の腹部から飛び出ている内臓を触ってきます。このシーンが最大の見どころでありクライマックスです。私もこれを見るためだけに本作を視聴しました。正直申し上げますとこのシーン以外は見どころは特に無いです。主人公の女性の「キャー!キャー!」とほんとに始終絶叫しているだけなので人によっては耳がキンキンしてストレスに感じるかも。B級映画が好きな方にはオススメできるのですが……あっGが苦手な方にはオススメできません。
ギニーピッグはスプラッターを売りにしたシリーズですが本作は特殊メイクのクオリティーが他のシリーズよりも低く、作り物感があるためグロく感じません。(視聴前は戦々恐々としていました)
本作は東京・埼玉連続幼女誘拐殺人事件で有名な宮崎勤元死刑囚が所持していたスプラッターホラービデオ作品『ギニ―ピッグシリーズ』の1つとして制作・販売される予定でした。しかし宮崎元死刑囚が起こした事件により本作はシリーズタイトルである『ギニーピッグ』の名前を変える必要性に迫られました。
宮崎勤元死刑囚は自宅に大量のアニメやホラーのビデオ作品を所持していたらしく、彼が起こした事件によってこれらのアニメやホラー作品が彼の人格形成に悪影響を及ぼしたとし、アニメやホラーは当時のメディアから猛烈なバッシングに遭い、オタクは犯罪者予備軍という社会悪のような認識が世間に普及してしまったのです。
今では普通に使われている『オタク』という単語は当時のテレビでは放送禁止用語として登録されていたようで、当時のオタク達がいかに世間から白い目でみられていたかが分かります。
↓当時の雑誌の切り抜き
今ではコミケが開催される日はメディアは好意的に報道してくれますよね。
あと本記事を執筆しているときに思い出したのはアニメ『ひぐらしのなく頃に』放送時期に起きた16歳の少女が斧で父親を殺害したという『京田辺警察官殺害事件』。
『ひぐらしのなく頃に』の作中でも少女が斧で人を惨殺する描写があり、未成年の少女の精神に悪影響を及ぼしたと報道され、一部の局で放送中止になってしまいました。最近のメディアは少年少女による犯罪が起きた際に何かと漫画やアニメによる悪影響をクローズアップして報道していますが、その割にはメディアがごり押ししている『進撃の巨人』や『鬼滅の刃』なども子供が見るにはグロテスク表現が多い気がするのですが。
刺激の強いシーンがあるため小さいお子様がうっかりテレビで見てしまわないように深夜アニメとして放送しているのに、バラエティー番組やニュース番組で特集を組むのはどうなんでしょう。本末転倒じゃないでしょうか。(不快に思われたファンの方がいらっしゃいましたら申し訳ございません。)
そもそもの話、その作品を視聴したせいでこんな事件が起きてしまったというのはあまりにも短絡的過ぎる帰結です。
表現の自由が奪われつつある気がする昨今ですが、昔は任侠映画やらエログロ映画やら昼夜問わず地上波で放送されていましたがその時と比べて犯罪率の推移はどのようになっているのでしょう。個人的にはカリギュラ効果ではないですけど、「悪影響を及ぼす恐れがあるため見てはいけない」と報道し、今後も作品の表現規制がさらに強まると逆に子供たちの興味をひいてしまうと思うんですよね。
だからと言って以前のように任侠映画やスプラッター映画をテレビ放送しろー!というわけではないんですけど……現状、この状態が続くのであれば今のテレビ業界では社会の暗部に深く切り込んだ野島伸司脚本のドラマのような作品は今後ちょっと厳しいですよね。うーむ難しい問題です。
ただ最近のアニメや漫画に対するメディアの報道の仕方は気持ち悪さを覚えてしまうのは確かですね。都合のいいように扱っているなぁと感じます。そっちの方が数字が取れるんでしょうけど。
私としてはまた金曜ロードショーで『エイリアン』シリーズをまた見れるような日が来ればいいなぁと思っているんですけど。まぁ難しいですよね。ぴえん。
ちなみにギニーピッグシリーズですがホラー漫画家の日野日出志さんが監督・脚本を兼任した『ギニーピッグ2 血肉の華』がのゴア表現がリアルで凄くグロいと評判ですので興味のある方はどうぞ(自分は詳細を調べて無理そうだったので見てません)
今回は作品の話というか私の愚痴に近い記事になってしまいました……
個人評価 4.3/10